2008年04月04日

エアロビクスとアネロビクスをかんがえる

はじめに

「エアロビクス」とは、英語で、“酸素がある”という意味の“エアロビック”という言葉から生まれたもので、日本語では「有酸素運動」と訳されます。
「アネロビクス」は、これに対して酸素を使わないで行われる運動(無酸素運動)を呼んでいます。運動のためのエネルギーを供給するしくみの違いによる分け方です。
 それでは、健康づくりにエアロビクス、アネロビクスを日常生活のなかでどうとり入れていったらよいか考えてみましょう。

運動のエネルギーはどのようにして生まれるか

 私たちが歩いたり、重い物を持ちあげたりするためには、骨格筋が収縮するときに出す力を利用します。骨格筋が収縮するためにはエネルギーが必要です。そのようなとき、私たちは、酸素を利用する筋肉の収縮と、酸素を利用しない筋肉の収縮の2つを使い分けて運動しています。

1 無酸素的なエネルギーによる筋肉の収縮

 100mダッシュとか重量挙げなどは、酸素を使わないで運動が行われます。このように短い時間に強い筋力やパワ一を発揮するような運動の筋肉の収縮には、筋肉中にたくわえられているグリコーゲンがエネルギー源として利用されます。しかし、酸素を使わない筋肉の収縮では、すぐに疲労物質(乳酸)がたまってしまい、筋肉はそれ以上、収縮できなくなってしまいます。そのため、運動は長く続けられません。
 そこで、再び筋肉が収縮できるようにするには、運動後に乳酸を消さないといけません。このためには酸素が必要で、呼吸によりとり入れた酸素を使って乳酸を二酸化炭素と水にまで分解します。このように運動後によぶんに摂取する酸素を「酸素負債」と呼びます。
 以上のように、酸素を使わないで行われる運動が無酸素運動、つまりアネロビクスです。このような状態で、全力で運動が続けられるのは、せいぜい40秒ほどです。

2 有酸素的なエネルギーによる筋肉の収縮

 歩行やジョギングなど、長時間からだを動かしつづける運動では、運動中たえず呼吸により酸素をとり入れながら筋肉の収縮を行っています。筋肉に酸素が送られると、たくわえられていたグリコーゲンや脂肪が酸化されて、二酸化炭素と水になります。その反応の途中でエネルギーが発生し、このエネルギーを使って筋肉を収縮させているのです。このような状態で行われる運動が有酸素運動つまりエアロビクスです。
 筋肉の有酸素的な収縮は、無酸素的な収縮に比べて、エネルギーの供給速度が遅くエネルギー発生のパワーも高くありません。しかし、酸素の供給さえ続けば、からだにたくわえられている燃料(グリコーゲンや脂肪)を使って、何時間でもエネルギーをだしつづけられます。

健康づくりとアネロビクス

 健康づくりとアネロビクスとの関連については、これまでエアロビクスほどには関心が向けられてこなかったようです。しかしながら、健康の保持にはアネロビクスもまた欠かせません。体力の低下を防ぐために、日常生活に積極的にとり入れたいものです。

1 健康づくりのためのアネロビクスの実際

 アネロビクスによる健康づくりは、具体的には筋力トレーニングにより筋力・筋持久力の向上をはかることが最大の目的になります。
 特別な器具なしで行えるものとして、アイソメトリックスおよび、自分の体重を利用したトレーニングがあります。

・アイソメトリックスによる筋力トレーニング
 壁を押す、鉄棒を引っ張るなどの動作で、筋肉の長さを変えないで(関節角度を変えないで)、全力(量大筋力)で5〜10秒間行います。1週間に3〜5回が適切とされています。

・自分の体重を利用した筋力トレーニング
 自分の体重を利用して関節に負荷をかけて屈伸し、力を発揮させます。大きな筋肉を使う8〜10種類の運動を、それぞれ8〜12回くり返しができるような強さ(重さ)で行います。週2回ぐらいが適切とされています。
 自分の体重を利用したトレーニングのやり方のいくつかを、イラストで示しておきました。

2 筋力トレーニングと健康

・アネロビクスによる効果
 筋力トレーニングをくり返していると、筋肉が肥大・発達してきます。この結果、筋肉中で無酸素エネルギーを発生させるはたらきが改善されます。
 筋力をくり返し発揮する力(筋持久力)も向上します。それだけではなく、筋力トレーニングが、心臓血管系や体脂肪に及ぼすよい影響についての報告もみられています。

・日常生活動作への効果
 筋力・筋持久力が向上すれば、日常の生活活動を容易にします。疲労を遅らせたり、よい姿勢を維持することができるようになります。また、いろいろなスポーツや運動に参加することもできやすくなります。腹筋、背筋が強くなれば、腰痛の予防になります。
 アネロビクスによる筋力トレーニングは、中高年の人の筋肉の衰えを防ぐのにもよい手段です。

3 アネロビクスによる健康づくりの注意点

 自分の体重を利用したトレーニングでは筋肉を伸ばしながら力を発揮するときに、筋肉痛をおこすことがあります。また、息をとめて行う運動は、全身の血圧を上昇させ、心臓への負担を大きくしますので、高血圧症や心疾患のある人には危険です。安全に行うためには、あらかじめメディカルチエックをうけておくこと、体調のわるいときは中止するなどの注意が必要です。

健康づくりとエアロビクス

 エアロビクスは、十分に長い時間をかけて心臓や肺のはたらきを刺激し、からだの内部に有益な効果をうみだします。歩く、軽く走る、ゆっくり泳ぐ、自転車にのるなどは、日常だれでもが行える典型的なエアロビクスです。

1 エアロビクスの効果

 現代人は日常生活のなかで、ますますからだを動かさなくなっています。その代償として得たものが体力の低下です。私たちは加齢に伴う体力の低下はさけられません。そして、運動不足におちいれば、実際よりもっと年をとることになります。エアロビクスを日常生活のなかで習慣化すれば、健康の保持・増進のうえでさまざまな効果が期待できます。
 まず、多くの酸素をからだに取りこみ、それを利用する能力が高まり、全身持久力を高めます。糖代謝にもよい影響をあたえます。毛細血管網の発達により高血圧の予防や改善がもたらされます。ひいては虚血性心疾患の予防にもつながります。
 また、エアロビクスを長時間続けているうちに、エネルギー源として脂肪が使われるようになります。その結果、脂肪代謝が改善され、体重のコントロール、体脂肪率にもよい影響をあたえます。動脈硬化の予防ができます。

2 健康づくりのためのエアロビクスの実際

・「やや強め」をめやすに
 まず、歩くことを中心としたエアロビクスを習慣化しましょう。
 健康づくりのためのエアロビクスは、自分自身の感じる“きつさ”(主観的運動強度)をめやすにするとよいでしょう。自分の感じている運動のきつさ(強さ)は、運動中の心臓の状態(心拍数)とよく相関するからです。

・歩行による健康づくり
(本シリーズ『歩行と健康をかんがえる』も参照のこと)
 1分間100〜120mのスピードで速歩きをすれば、ゆっくり走るのとほぼ同じ運動強度になります。
 歩行による健康づくりでは、運動強度よりもむしろ運動時間を長くすることが大切です。一般的には、速歩すなわち“さっさと歩く”ことがポイントです。1日20分以上歩くようにしましょう。
 はきものは、軽くて、通気性がよく、足によく密着するもの(ウォーキングシユーズやジョギングシユーズでよい)を選びます。

・ジョギングによる健康づくり
 ジョギングはマイペースのゆっくりとした走運動です。運動強度としてはそれほど高くありませんが、効果的なエアロビクスといえます。
 スピードをあげたジョギングでは、無酸素運動になってしまうだけでなく、膝痛など関節の傷害をおこしやすくなります。こうした傷害をさけるためには、1kmを7分ぐらいをめやすに、ゆっくり走ることが大切です。1日おきぐらいに走ります。
 靴は、ぴったりしたものよりいくぶんゆとりのあるもの(とくに爪先部分)、靴底はいくぶん厚めでクッション性のよいもの、かかとがしっかりした作りになっているものを選びましょう。

・水泳による健康づくり
(本シリーズ『水泳と健康をかんがえる』も参照)
 水泳は、性、年齢、体力レベルを問わずに行えるすぐれたエアロビクスです。ふだんあまり使わない上肢をより多く用いる全身運動でもあります。また、スポーツ傷害をおこすことも少ないので、運動不足の解消、健康づくりに大いに活用してください。
 全力で泳ぐのではなく、自分のペ一スでゆっくりと長時間(20分ぐらい)にわたって泳ぐことが大切です。
 水中での運動は陸上での運動に比べて、同じ“きつさ”を感じる場合でも心拍数が少なくなることが知られています。陸上運動のときよりやや弱め(心拍数で1分間に10拍ぐらい少なめ)をめやすにしてください。

・自転車による健康づくり
 自転車は、サドルが体重を支えてくれるので、膝への負担がかかりません。老若男女を問わず運動を長時間つづけられます。
 一般の人が、道路をふつうに走っているときのスピードは、男性で時速15〜20km、女性では10〜18km程度です。運動強度としては比較的低いものですが、長時間継続することでエアロビクスとしての効果がでてきます。
 健康づくりに自転車を利用するときは、ペダルを「やや強く」の感覚でこぎます。
1) 体力水準の低い人は、できるだけ毎日、マイペースで、距離的に近くても、通勤、買物の往復に。
2) 通勤あるいは買物に、自転車を頻繁に利用している人は、週2〜3日、「普通」あるいは「やや強く」の感覚で、遠回りをして1日20分。
3) 体力づくりのために、本格的に自転車を利用する人は、週3〜5日、「やや強く」の感覚で1日20分以上。
 一般道路を走るときには、自動車やバイクなどと接触事故をおこす危険性があります。自転車の点検や交通規則の順守を心がけ、安全には十分気を配りましょう。

・エアロビックダンスによる健康づくり
 エアロビックダンスは、心肺機能を高める運動、筋力強化の運動、柔軟性を高める運動などが、ダンス的な動作により、音楽にあわせて行われるものです。主にフィットネスクラブで、インストラクターの指導のもとに、大勢でいっせいに行われるのが普通です。
 最近では、ウォーター・エアロビックダンス、妊婦のためのマタニビックスなど、目的や対象により内容をいろいろ変えたものが考案されています。
 ステップやジヤンプの動作が多いと、下肢(膝、足部)に傷害がおこることがあります。初心者の場合は、特に医学的、運動力学的、運動生理学的にみて適切なプログラムを組むことが大切です。

3 運動を安全に行うために
 
 日常生活のなかに運動を習慣化するようにしましょう。
 運動をより安全に効果的に行うためには、事前にメディカルチェックをうけること、運動する当日の体調にも十分気を配ることが必要です。 
 体調のチェックは、運動前、運動後に行いましょう。運動中の変調は、自分自身で知る以外にありません。呼吸が苦しいなどのときは速やかに中止します。
 運動前に、使う筋肉を伸ばすためにストレッチング、関節の屈伸をすること。終了後はしばらく軽い運動をして、徐々に安静水準にみちびいていきます。
 十分な栄養、休養は健康づくりのための運動の効果を高めます。
posted by abelu at 22:14| Comment(0) | TrackBack(5) | 健康・ダイエット | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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